威鶴のmemory
和解
パクパクと口を開け閉めしながらパニックになっている私にまたキスをして、トーマは言った。
「俺の彼女。すげー大切な奴」
『すげー大切な奴』
その一言で舞い上がれる私は、とても単純なのだろう。
だからこんな男に引っかかったんだ。
そうに違いない。
「……彼女?」
「あぁ。それと……俺の恩人でもあるな」
恩人とはきっと、威鶴の事だ。
トーマと私は、決して『彼女』だけでは紹介しきれない。
出会いから特別であり、仲間で、パートナーで、親友で、恋人で、大切な人で……トーマがいなかったら、今の私は存在していなくて……。
「私にとっても、彼はなくてはならない存在です」
そして私は、ようやく──
「柴崎依鶴と申します」
自分を紹介することが出来た。