威鶴のmemory


……こういう事は今までなかった。

あ、でも威鶴の時にぶん殴ったことならあったけど、依鶴としてはなかった。



思わず、聞きたくなくて立ち上がり……逃げようとしたのか、反論しようとしたのか……自分でもよくわからない。

でも嫌で、その先を聞きたくなくて、私は立ち上がっていた。



「依鶴?」



心配と困惑を含むトーマの声。

冷静になって、思い出す。



半年前、私はこの未来を見た。

遥香さんの未来として。



でもその時の依鶴は、立ち上がらなかった。

そのままトーマとお父さんの口論が続き……仲違いのまま帰って行った。

だから家族全体の解決はこの日より後になってしまうと言った。



しかし今、私は立ち上がっている。

それが指していることは──未来が変わっているということ。
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