威鶴のmemory
「依鶴には正直見てほしくねーけどな」
ソファーの横に正座で座り直し、膝に手を置いて頭を下げた。
土下座はさすがにしたくなかったのか……きっとトーマのほんのささやかな抵抗だ。
「四年前、家をメチャクチャに荒らして出て行って、すみませんでした!」
家族全体が、息を呑んだ。
「すっげぇ後悔してる。あの頃は本当に全部が全部嫌で、煩わしくて、気持ちを止められなかった」
「お前──」
口を挟もうとしたお父さんの口を、お母さんの手が塞いだ。
そして首を横に振る。
トーマに、言いたい事を言わせてくれるのだとわかった。
「反抗期って理由だけじゃ済まねぇ事をした。だって俺、本当は嫌いなんかじゃねぇんだ。嫌いじゃねぇ場所を壊した」
「……」
「コイツのおかげで知った。なくしちゃいけないもの。大切なものの扱い方」