威鶴のmemory
「3年もかかった。経験するのに、素直になるのに、大切なものを知るのに。それでも帰らないって選択肢は、なくならなかった」
今のトーマは、お父さんに、どう映っているんだろう?
それでもまだ、突き放すんだろうか?
今までと同じように……。
「言いたいことはそれだけか」
冷たく聞こえる低い声が響いた。
「……あぁ」
「それがお前の本当の気持ちか」
「そうだ」
ずっと言いたかった事をようやく言えたトーマの顔は、スッキリしているように見えた。
「お前は……見ないうちに大人になっていたんだな」
お父さんの……ほんの少しの優しさを含んだ声が、リビングに響いた。
「本当だ、子供たちはいつまでも子供じゃない。あのトーマですらこんなに大人になった」
「あのってなんだよ」
「香織を泣かせていた問題児だっただろう」
問題児の基準に何か引っかかったのは、私だけでしょうか?