威鶴のmemory
──お父さんは、愛妻家でした。
「私……?」
「香織を泣かせる奴は、例え子供でも敵だ」
「……トールさん」
「香織……」
竹原家は、愛に満ちたご家庭でした。
それから帰って来る事を許されたトーマと私は、今日のところは帰ることにした。
「じゃ、またいつでも来なさいね。依鶴さんも」
「え、あ、はい。お邪魔しました」
ラブラブなご両親に見送られ、私たちは車に乗り込んだ。
なんとも意外すぎる展開に、トーマの方がついていけなかったらしく、じと目で運転していた。
こうして私たちの長い一日が終わった。
「トーマ、お父さんの印象変わった?」
「……もっとクール系だと思ってた」
「仲良くしていけそう?」
「……そこそこ、な」
そう言ったトーマの表情は、とても満足そうだった。