威鶴のmemory


「あ、あの、ちょっとま待って……」

「あ?……あ」



必死になって口説いていた俺は、今更ながらに気付いてしまった。



「トーマの気持ちは、よくわかった、から……。もうそれ以上は、なんというか……私の方がムリというか……」



俯いて、繋いだ手とは逆の手で顔を覆う姿。

その首もとと耳は……街灯に照らされて真っ赤になっていることが確認出来る。



つまり……必要以上に口説き過ぎて、恥ずかしがらせてしまったわけだ。

そしてそんな姿もカワイイ。

羞恥心、バンザイ。



「私……どう答えたらいいの?」

「どうって……」

「私の気持ちは、話したから。その、付き合う付き合わないの答えというか……経験ないから、よくわからなくて」



そう言われ、ようやく理解した。

確かに、肝心なことを聞き忘れていた。
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