威鶴のmemory


トモはさらに笑って言った。



「心とか信頼とか……好きな女とかじゃないっすかね」



……それは、今までほとんど感じたことのなかったものだった。



「そんなもん、ムリだ」



だってほら、もう諦めている。



「でも女ならその辺にいる」

「そうじゃないんすよ、自分から好きにならなきゃ意味ないっす」

「……自分から?」



俺が、人を信頼したり、好きになったり……?

そんなもん、できねぇよ。



「いつ裏切るかもわからねぇ奴ばっかじゃねぇか」

「それそれ、その不信感とかネガティブシンキンが邪魔してんすよ!トーマさんはその辺の女じゃ満足出来ないんす!」



うわ、欲深い奴みたいに思われてんだな。

……でも案外間違っちゃいねぇ。



疑い癖や諦め癖のせいで、人に深くは入り込まない。

全員同じ、特別はいない。

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