威鶴のmemory


少しだけ痛みが引いて来た俺は、仕方なくペンを持ち、ヨレヨレなサインを書いた。



「……ヨレっちいんだけど」

「お前のせいで力入んねぇんだよ!」

「まぁサインには変わりないか。威鶴さん、コレ、よろしくお願いします」



ニコッ

俺には見せることのない笑みを威鶴に向ける叶香。



イラッ。

兄的なプライドが傷ついた。



「威鶴テメェ後で覚えてろ」

「八つ当たりなら他あたれ」



どいつもこいつも冷てぇ奴ばっかだな。



ようやく痛みが引き、立ち上がる。

必殺技を兄貴に使うなっつんだよ。



「で、叶香は何しに来たんだ?蹴りに来たのか?」

「アンタが、困った事があったら来いって言ったんでしょ?」

「遥香にな」



それがどうしてこうなった──あ?



「困ってんのか?」

「……バカボケクズしねクソ兄貴。威鶴さ~ん、お願いしますね」



……。
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