威鶴のmemory
彼は家出少年らしく、今は家がないという。
だからBOMBの事務所の近くのマンションの一室を、彼に与えた。
彼はBOMBの中でもトップ5に入る素晴らしい能力の持ち主だった。
なのに……。
「ねぇ、なんでバイトなの?本契約を結べば、もっと報酬が貰えるのよ?」
「いらない」
「そうだわ、高校へ行けばいいのよ。あなたまだ18歳くらいなんでしょう?ここでなら学費も払えるし、日曜日しか仕事を回さなければ──」
「いらない、面倒だ」
「……行きたくないの?」
「特に行きたいとは思わない」
威鶴は最初、少し生意気で、子供っぽい所も見え隠れしていて……そして、残酷な瞳を向けていた。
全てを拒絶するような瞳。
それからしばらくの間、威鶴はウチで働いた。
パートナーは当時私の担当下にいた女の子のバイト。
一緒に仕事をさせているうちに、いつの間にか鋭かった瞳が柔らかくなり、性格も生意気じゃなくなり、少し大人になった。
よかった……と安心していたのも束の間、今度は威鶴が男の子を拾って来た。