威鶴のmemory
あの日、あの時しか会っていない赤ちゃんのことには、何も教えられなかった。
ただ、記憶の中に、私に妹がいること。
それだけは確実で、例え……生きているかもわからないとしても、絶対に知りたかった。
知りたかったから、大人になって、私の父の職を知った時、チャンスだと思った。
あの組織の一番上の立場、それが父の職。
それを知ったのは高校を卒業した頃だけれど、教えられてから入るまで、迷いはなかった。
BOMBに入ってから、私はこの人並み外れた洞察力を使って、レインとして、ひたすら依頼をこなしていた。
レインて名前は……まぁ単に優雨って名前から取ったのだけれど。
少しはわかったのよ、妹が何をしているのか。
とりあえず生きてはいる。
どうやら不思議な力があるって情報を得た。
居場所も……大体はわかっていた。
それだけで満足していたの。