威鶴のmemory
バレンタイン
私は、完全に忘れていたのだ。
街を歩けば、こんなにもピンク一色、チョコレート祭りだったというのに、前日になってから気付くなんて……。
だってこんなイベント、参加したこともなかったんだもの!!
──それは、レイン……改め、優雨(姉)の言葉から始まった。
「依鶴ー、私、トリュフがいいなぁ~」
「……え?」
朝、帰ってきた姉は唐突にそう言ってきた。
なんのこと?と思いながらも「あ、はい、行ってきます」と姉に返し、帰りに買ってくればいいのかと思いながら家を出──そして店に着くまでの道で気付いた。
私の仕事場は、ショッピングモール内。
つまり、モール内全体がイベントに力を入れているわけで、必然的に他の店も通るわけで……そして気付いてしまった。
なぜ今まで気付かなかった……?と。
仮にも彼氏持ちが、2/13日になってようやく世間の異変(?)に気付くなんて。
──明日は、バレンタインじゃないか……。