W-アイ ~君が一番に見たいもの~ 【完】
ついに俺の包帯が取れ、俺は、オッサンより先に退院することになった。
相変わらず見慣れた面を、ダセえ化粧で塗りたくったお袋は、オッサンに向かって満面の笑を浮かべた。
「本当にお世話になりました。おかげで、うちの子も退屈せずに過ごすことができて」
「何言ってんだよ。俺が面倒見てやったんだよ。な、オッサン?」
「あらやだ、拓実ったら、なんて失礼なことを」
「あはは、坊主、その通りだよな。ありがとよ。毎晩遅くまで突き合わせて悪かったな」
「いや…」
オッサンは実は硬派な顔をした男だった。
目は包帯で覆われて見えなかったが、窓辺に置かれた、誰かとのツーショットの写真のオッサンは、いかにもボクサーらしく俺には映った。
「オッサン、じゃあな。また遊びに来てやるぜ……そうだ、オッサン。今日包帯とれるんだよな?つうか、でも期待はすんな。包帯が取れて、俺が一番最初に見たもんは、残念ながら、あのナス婆の顔だからな」
「なんだと?おい……待て、こらっ。ナス婆はねえだろ!」
「あはは。じゃあな」
「おいっ!まて!」