マンゴーにはなれそうもない
一応、あたしの気持ちを
察してはくれていたらしい。

車で連れ出し、走ること約2時間。
もうあと一時間でお昼である。

山の麓の野っぱらの駐車場に停め、
少し歩いて川に下りて行く。

川岸にいる集団には大人も子供が
入り混じって、
バーベーキューの準備をしていた。


「押忍!」

「押忍! わー! 先生、女連れだー!」


わらわらと彼の元に集まる子供たち。
小学校低学年ほどの年齢だった。


「先生?」

「空手教室の連中だよ。
たまに指導手伝ってるんだ。」


1クラス分はいる。
バーベキューのコンロが四つもあって
それぞれ大人達が準備をしてた。

中でも嫌に女子の集まる所があって、
皆、きゃっきゃっとウチワを扇いで
火を熾そうとしてる
大人の手伝いをしていた。


「風向きが悪いな。
皆、そっち方向に煽いで・・、!?」

「・・・!」


あたしを見つけ火バサミを持ったまま
呆然と立ち上がったのは・・優弥である。

目の前の彼の視線が少し上を向いた。
後に立つ、甲斐を見たのだ。


「よう、お疲れ。来れないって
云ってたんじゃなかったのか?」

「・・・都合付いたんで。」

「・・・。」


甲斐が肩にでも触れようものなら
振り向きザマ殴ってやるところだが
どうやらワザとではないらしい。


「・・・友達って彼?」


あたしと優弥は別の集まりの方へ歩いてく
甲斐の背中を眺めながら言葉を交わした。


「信じないだろうけど・・それだけよ。」


信用などとっくに失墜しているのだ。
それにもう何を言い訳する事もない。

あたしは彼にプイと背を向け、
川の方へ近づいて腰を降ろした。

それが甲斐には
独り拗ねている様に見えたのか。


「瑠璃さん? 機嫌・・悪くした?」

「・・・。」


無言で煙草に火を着けてる
振り向かないあたしの肩を手に包む。


「あっちに行って。」

「瑠璃さ、」

「殴るよ?」

「はいッ。」


子供達も居てる前で
女に殴られたくはないだろう。

コース的には
殴る→なじる→去る

そうなるのは解ってるだろうから。
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