マンゴーにはなれそうもない
___________段々と・・
俺の知らない
瑠璃になってしまうんだな・・。
あの髪型、あの服装もそうだ。
似合ってるよ・・けど、
誰の影響で
貴方が変わってしまうのかと思うと
俺は多分・・悔しいんだ。
「・・・・・・あっ。」
「こら、お前! 車だろーがっ!
あれ?瑠璃さんと一緒じゃなかったのか?」
先輩が俺の手のビール缶を取り上げた。
この男の影響だったりしたら
尚更、腹が立つ・・。
「甲斐先輩、彼女に一目惚れして
プロポーズしたって噂・・マジですか?」
「えっ、噂になってんのか? ふふ。
ああ、前カレがお前だとは知らずにな。」
「・・彼女、此処に俺が居たんで
怒って帰っちゃいましたよ。」
彼はヤンキー座りで俺の隣に腰を降ろし、
麦茶のペット・ボトルを一口飲んだ。
予想はしてたか特に慌てもしなかった。
「そか・・タクシーでも拾ってホテルに
戻るだろ。荷物もまだ置いてある事だ。」
「まさか・・一緒に?」
「ああ、ワケありでさ。手を出さない
条件でご一緒させて頂いているよ。フフ」
この男は・・
いつもワザと手の内を見せてくる。
フェアと云う言葉通りに。
試合でも何でもそうだった。
"彼女だけは止めてくれ"と勝手な事を
俺は他の男になら言えたものを。
この男は小さい時からの
俺の憧れでもあり、嫉妬の対象でもあった。
いつも
コンプレクックスを刺激する存在だ。
見た目の野生的なルックスとは違い
呑気そうな、飄々とした口調が
大人になるにつれ忌々しくなってた。
「夜のデートにも酒はお断りだそうだ。
そんな約束をさせる女が・・浮気ってか? 」
「・・・・!」
彼は無意味にペットのお茶を横に振ってる。
言葉を続けるが、一度も俺の顔を見ずに。
「俺なら・・彼女を信じて余計愛してやる。
職業柄、一番傷付いてる女を無視できない
からな。それがあの人なら尚の事だ。」
( ・・・まさか!? )
「ああ、それと。お前の前カノな。
あのサイコ女を二度と彼女に近づけるな。
俺はあのヘア・スタイルが気に入ってる。」