マンゴーにはなれそうもない
あたしは胸に握ってた拳を解こうとして
また我に返る。


「・・・瑠璃?」

優弥は待ちきれず
あたしの手を引くが云う事を聞かない。

その何かに・・
彼を巻き込むのではないか、

もしかしたら
何か勘違いをしているのではないかと云う
この2つの不安がそうさせていた。


「許して貰わなきゃいけないのは
あたしの方じゃ・・・?」

「違う・・!」

「・・・っ!」


グイっと手を一気に引き、炭の匂いのする
彼の体に体当たりで抱き留められていた。


「違う、解ったんだ・・。
俺が・・子供だったんだ・・!」

「優弥・・?」


ホテルの暗い駐車場で、
抱き締められたままあたしは火照った頬に
ヒンヤリと湿った風を感じている。


「急に・・どうして・・?」

「・・・髪の事、聞いた・・。」

「・・・・・。」

「瑠璃が本当の事を俺に云わないのは
俺がまだガキで未熟だからだって・・
やっと・・気が付いたんだ・・・!」


一頻り背中を撫でていた手が止まり、
鼻をグズらせた彼がようやく
腕を解いたかと思うと頬に手を添えた。


「ゆ、・・ンっ」


頭上のカメラが気になるのに・・
延々と長いキスを与え続けるのだ。


( 苦し・・・! )


息継ぎのタイミングがおかしくなる様な
激しさに胸を叩いたあたしの手首を掴む。

まだだ、まだ足りない。

好きに奪わせてくれと云わんばかりに
唇を合わせ、たっぷりと吸い尽くした。

なのにあたしは
優弥が激しければ激しいほど、心の中、
言いようのない不安を募らせている。

甲斐と云う男への疑念からか・・。


「っ・・・!」


ちゅぱ・・と静かに音を立て唇を解いた。
目を合わしたのも束の間、

あたしを巻き込み
弾む胸に顔を埋めさせてる。

彼の音がする。心が・・震えている音。

他にも女はいるだろうに
なぜそんなにまで・・あたしを欲してくれるの?


「優弥」

「・・なに?」

「ドキドキが・・凄い・・。」

「・・うん・・俺、壊れそうだ・・。」


愛しくなる事を云わないで・・
またあたし、弱ってしまう・・。

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