マンゴーにはなれそうもない
____ 危なかった

寝言、言わなかったかしら


あたしはヘッドに背もたれ、
落ち着こうと缶の紅茶を
勢い良くそれを喉へ流し込んでいた。


( コウちゃんの夢を見るなんて・・彼と
優弥のセックスが似てきたから? )


ビクビクさせるほど優しいかと思えば
一旦、激しく突き揺らし始めると容赦がない。

時々、彼にとってのセックスは
スポーツなんじゃないかと思ってしまう。

いつもHした翌日、シップ薬だらけで
店に出ていたあたしを優弥は知らない。

若いから・・あんなコトもこんなコトも
ヤッてみたいんだわ・・なんてまた遠い目。

それに稀に見る相性の良さ・・
あれ以来なかったくらいに。

親父の血は多少入ってるようね。
こんな時に・・あたしも
ナニ呑気な事思ってるンだか。

煙草に火を着けた時、丁度
彼が戻って来た。

でもなぜかその顔には
安心させてくれる笑みはなく・・。


「喧嘩になったの?」

「いいや・・これ、携帯返しとく。」

「うん・・?」


何か云われたのかもしれない。
聞いた所でどうせ教えないだろう。


「シャワー浴びてくる」

「ああ」


バスローブのままソファに座った
彼を横切り、浴室へ向かう。

シャワーの湯気の中、
鏡に映った顔は殆どスッピンで

今夜の・・いつにない激しさを物語る
体中に咲くキスの花をジッと見つめ、
指先でそっとなぞってみる。


___ 正義感の強い甲斐の事・・

きっとあたしの様子を彼に伝えたんだ


誤魔化せばまた、
優弥は怒りも・・傷つきもするだろう。

どうか____


「きゃっ!」

顔を濡らしてる最中、
不意にお腹に腕が回ってきたのだ。

背中に張り付く少し冷えた胸板、
耳元には興奮冷めやらぬ息遣い。


「やだ、もう・・!」

「俺に言えない事を・・考えてた?」

「何のこと・・優弥? や、止めて・・。」


突然あたしの両手首を後ろから取って
タイルへ後ろ向きに押し付け出したのだ。

低く小さな声色と
表情が見えない不安が体を強張らせた。


「ねえ・・携帯の写真の男は誰?」

「・・・!!」



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