マンゴーにはなれそうもない
反対されると解っていて
彼女も相談しなかったのだろう。
瑞穂は黙って視線を外した
斜め下を見つめている。
成す術なくそんな彼女を目視したまま
あたしも不謹慎と云うか・・
頭の隅では姉の言ってた
雌しべと雄しべの話を思い出してた。
果実で云う、"人口受粉"だわ・・と。
あたしの考えはとうに決っている。
彼女の名前を
小さく声にして目を合わせた。
「・・お引き受けできません。
彼もそれを望む事はしない筈。」
「・・何不自由させないと云っても?
それに報酬だって私から用意するわ。」
具体的な申し出・・
既に準備が出来ているかの口ぶり。
しかし、何を云われても
首を振ることしか出来ない。
「申し訳ありません・・。」
「・・今の生活が大事なのね。」
「勿論、それもあります。」
自分の生きて行く新しい世界を探せと
背中を押したのは他でもない彼である。
だからきっと、卒業式であたしの姿を
見た時には喜んでくれた筈なのだ。
それに今・・あたしみたいな女を
愛してくれている男がいる・・。
そして静かに言葉を続けた。
「彼を裏切る様な事は・・できません。」
何かの宣告を受けた様に目を深く閉じてる。
本当は瑞穂だって解っているのだ。
「お話は昔に聞いていたので本当に
お気の毒だと思っていますが・・どうか、
もう一度洸汰さんと話し合って下さい。」
「・・・・。」
「では・・、これで失礼致します。
お体、お大事になさって下さい・・。」
それ以上居た堪れず、あたしは席を立った。
廊下に出てもやはりお供は居ない。
店を出たあたしは
早々にカプホを引き払いに行った。
駐車場に降りて車に向かおうとするが
エレベーターが上がって来ない。
仕方なく階段を使って降りて行く。
「?」
その手前、妙な空気を感じて足を止めた。
暗闇から駐車場をそっと覗き見る。
「・・・!」
口元に僅かな体温と気配を感じた時には
もう後から口を塞がれていた。
「・・お静かに。」
聞き覚えない男の小声が耳元で聞こえて
あたしは体を硬くして迷う。
彼女も相談しなかったのだろう。
瑞穂は黙って視線を外した
斜め下を見つめている。
成す術なくそんな彼女を目視したまま
あたしも不謹慎と云うか・・
頭の隅では姉の言ってた
雌しべと雄しべの話を思い出してた。
果実で云う、"人口受粉"だわ・・と。
あたしの考えはとうに決っている。
彼女の名前を
小さく声にして目を合わせた。
「・・お引き受けできません。
彼もそれを望む事はしない筈。」
「・・何不自由させないと云っても?
それに報酬だって私から用意するわ。」
具体的な申し出・・
既に準備が出来ているかの口ぶり。
しかし、何を云われても
首を振ることしか出来ない。
「申し訳ありません・・。」
「・・今の生活が大事なのね。」
「勿論、それもあります。」
自分の生きて行く新しい世界を探せと
背中を押したのは他でもない彼である。
だからきっと、卒業式であたしの姿を
見た時には喜んでくれた筈なのだ。
それに今・・あたしみたいな女を
愛してくれている男がいる・・。
そして静かに言葉を続けた。
「彼を裏切る様な事は・・できません。」
何かの宣告を受けた様に目を深く閉じてる。
本当は瑞穂だって解っているのだ。
「お話は昔に聞いていたので本当に
お気の毒だと思っていますが・・どうか、
もう一度洸汰さんと話し合って下さい。」
「・・・・。」
「では・・、これで失礼致します。
お体、お大事になさって下さい・・。」
それ以上居た堪れず、あたしは席を立った。
廊下に出てもやはりお供は居ない。
店を出たあたしは
早々にカプホを引き払いに行った。
駐車場に降りて車に向かおうとするが
エレベーターが上がって来ない。
仕方なく階段を使って降りて行く。
「?」
その手前、妙な空気を感じて足を止めた。
暗闇から駐車場をそっと覗き見る。
「・・・!」
口元に僅かな体温と気配を感じた時には
もう後から口を塞がれていた。
「・・お静かに。」
聞き覚えない男の小声が耳元で聞こえて
あたしは体を硬くして迷う。