マンゴーにはなれそうもない
コインパーキングまで辿り着くと
彼は急いでロックを解き、
助手席のドアを引いて開けた。


「早く・・!」

「・・・・優弥・・。」

「話は後、追われてるんだろ!?」

「・・・・。」


どうして?・・そう聞くまでもない。
ずっとツケられていたんだろう。

言葉も出ないまま、
彼の言葉に従って車に乗り込んだ。

長い長い、沈黙の中
窓に流れていくネオンの灯り・・。

そしてそれは次第に寂しくなって行く。

彼は何を思ったか、そこからは近い
隣町の森の中を走り出したのだ。

暫く行くと
大きなログハウスが見えてきた。

この辺りは保養地にもなっていて
高級感のある老人ホームや、
大企業所有の保養所なども多い。

だからその類の建物も結構ある訳で
それ自体ここでは珍しくないものだが

そのハウスの前ではあちこちで
焚き火を囲んだ浮かれた連中がいた。

上を見上げると
"アウトドア・フェスティバル"の幕。


「行こう。」


車を野っぱらの空いた所に止めて降りる。

彼はそこに居たオジサンと親密な
握手と片腕でのハグを交わしていた。

なぜカウボーイハット?

そのオジサンは親指でハットを押し上げ
ニコニコとあたしにも握手を求めてきた。


「ようこそ。コーヒーとバーボンの
どっちかになるけど、どうしようか?」

「あ・・・・。」

「叔父さん、
先に彼女を休ませたいんだけど。」


叔父さんと呼ばれた男は
あたしと握手をしながら後ろにある
五台並んだアメリカから直輸入した
トレーラーハウスを指差している。


「あの裏にもう一台隠してある。
気に入ったらサインしてくれよ?」

「ふふ・・出世するまで待ってよ。」


優弥はそう彼に笑いながら
あたしの肩を抱いて
トレーラーハウスに入って行くのだ。

ウッド調インテリアはホッとする様な
優しい色で中は思ったより広かった。

ベッドサイズはクィーンだし、
キッチン、バスタブもあるのに驚く。


「親父の弟なんだけど、自由人でさ。
輸入住宅の仕事で向こうに行ってる内に
コレの魅力にハマって別会社作ったんだ。」


「・・・。」

< 120 / 129 >

この作品をシェア

pagetop