マンゴーにはなれそうもない
カウチの前で向かい合った。

ジッと真剣な眼差しに耐えられなくて
あたしは直ぐその目から顔を反らしてる。

またウソをついたと・・
責められて当然なのだから。


「もう心配ない。」

「ゆ、」


顎を手で上向きにさせたかと思うと
何も言わさない内からゆっくり唇を塞ぐ。

腰と首をしっかりと抱き、
キスを終えた彼の口からは大きな吐息・・。


「大丈夫、安心して・・。」


耳にキスを押し付けながらそう囁き
続けるサマは、まるで安全性を自分にも
言い聞かせているかにも見えてしまう。


「危険なのよ・・?」


気が付けば体に同調して声が震えている。

心配して助けに来てくれた嬉しさと
彼を巻き込む恐ろしさで・・・首を振った。

その暖かい胸から少し離れて見上げた
端正な顔が、一途で真っ直ぐな眼差しが、
また・・あたしを黙らせてしまうのだ。


「絶対、瑠璃を守ってみせる・・だから・・
俺と距離を取ろうとするの、もう止めて・・。」


あの時・・スルリと解けて行く指を
葛藤を殺す気持ちで眺めていた・・
そんなあたしに彼は壁を感じたのだろうか。

こんなに・・貴方の胸は心地いい所なのに
こんなに・・貴方は想ってくれる男なのに


「昔ね・・・自分で蒔いた種なの・・それに、
これから何が起こるか解んないから・・。」

「だから何?」

「優弥・・。」


大事なものが出来ると・・ダメ。
あたしはウンと弱くなってしまうから。

嫌われたくない、失いたくなくて
過去の自分を曝け出せないでいる・・。

見てよ、どんどん気弱になってくこの女を。

頑張って"あたしの強いカレシ"になろうと
あたしの木を・・ 心を・・、

優しい言葉で揺さ振ってくる
そんな愛しい男の腕に今にも墜ちようかと
グラグラして泣きそうになってるじゃない・・。


「・・・誰が相手でも俺は本気だ。」

「ダメ・・!」


枯れた声を上げ、彼にすがり直した。

云って置かないと
気負って無茶をするかも・・え?


「"刺し違えても"なんて、カッコいい事、
俺は云わないから。 フフ 安心して・・。」


その口ぶりは・・何?

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