マンゴーにはなれそうもない
「だって、俺達2人が一緒に生きてなきゃ
ゼンッゼン意味ナイじゃん・・だろ?」

「優弥・・。」

「まぁ、オーバーに云っちゃったけど、
あんまり深刻になり過ぎるなよ・・!」


心の中で神様の名を小さく呟いてた
あたしを・・優弥は知るよしもなく、
肩のバッグを下ろさせて座らせた。


「飲み物、貰って来る。」

「うん」


そう云って彼はお腹を摩りながら
外へ出て行った。

車を置いて見張ってたとしたら
多分、食べてる余裕もなかったんだろう。

誰が見ても素人女には見えない瑞穂と
一緒に居た所を見られていたのか・・。

彼は相手がヤバイ関係だと
薄々は気付いている様だった。

だったら尚更・・気付かれない内に
黙って逃げてくれればいいものを。

あの駐車場での出来事を振り返れば
けしてオーバーではないと思えた。


「・・・?」

つい、イラっとして
煙草を吸おうと取り出したが、
灰皿がドコにも見当たらないのだ。

仕方ないので表に降りて行ったら
バーベキューコンロの前、

豪快な野菜や肉の刺さった串を
叔父さんの真似をして
立ったまま頬張っている彼が居た。


「アチっ・・肉汁!」

「野菜が先だろっ・・お。
一緒に何か食べるかい? 」


ハンカチを優弥に渡すと照れた口元が
への字口みたいになってる。

急いで食べて戻るつもりだったのか。
それがちょっと可笑しくて。


「サンキュー・・。」

「ゆっくり、食べて・・ね?」


何も食べてなかった事、
きっとあたしにバレたくなかったんだ・・。


「ヘーイ! レディには特別、
スペアリブ切り分けてあげるよ!」


叔父さんと同じハットを被った青年が
焼いてるリブ肉をナイフで削いで
紙皿に入れ、あたしに手渡してくれた。


「有難う。」

「云っとくけど、俺の彼女だから。」

「おおっとォ~、待て待て。ソレ、
初めての彼女宣言じゃねーかぁ? 」

「・・ウルサイ! ヒガむなっ!」


だいぶ酒が入って、
テンションも上がってるもんだから
叔父さんが咎めてた。

どうやら彼の息子さんらしい。
優弥とは従兄弟ってことだ。


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