マンゴーにはなれそうもない
「・・火の始末も完了!」

「おーし、ご苦労。」


夜の11時を回った頃、催しも終了。
それぞれテントやトレーラーに戻って行った。

あたしもバスに浸かった後、
ベッドに入っていた。


「電話した?」

「うん、当分は
自分が出るって張り切ってたわ。」


優弥もバスから上がってくると
貰って置いたペットの水を持って
ベッドに腰掛けてた。

オーナーには身内の不幸で東北の田舎に
帰ると嘘の言い訳をしたのだ。

母方の祖父母はピンピンしてる。
勝手に亡き者にしちゃう悪い孫を許して。


「"萩の月"、空港で買わないとなぁ。」


・・なんてボヤくあたしは

"昼間は平気だろう"と、仕事に
出るつもりだったが、彼も明日は仕事・・

"兎に角、休むと電話してくれ"って云う、
優弥の説得に負けた。


『俺が火事現場で集中できなくて
ミスして事故にあったら・・泣くでしょ?』


この前、
亡くなった先輩の話も聞いていたし、
そんなコト云われたら仕方ない。

店に勤めてから初めてのズル休みである。


「俺が買って来くる。さ、もう寝よ?」


そう云って彼は灯りのスイッチを切り、
ベッドに潜り込んで来た。

しっかりあたしの腰に腕を回し、
まるで捕まえておくように。

さすがに疲れていたあたしは
半ばウトウトしながら彼の言葉を耳にする。


「瑠璃にはさ・・あのお店、
凄く似合ってると思うんだよね。」

「・・そう?」

「高校生三人組の不良が来てるだろ?」

「・・ああ。」


あの、不良になりきれてないウブなコ達。
よく知ってるんだナァ・・と思ってた。


「ボディ・チェック、したよね?」

「え!?」

「フフ、実は観てたンだ。」


彼には見せられない眉間にシワ。

そんなコトもあったっけ・・?

エーと、あれは確か・・よく知らんが
同じ制服着た別グループとのイザコザで。

常連組が店でケンカになりそうだって時、
あたしもバイトから報告受けて・・。


「表に出る前に全員、一列に並びなッ!」


時間はデッド・タイム寸前
休憩中の煙草を手にしたまま出た途端。



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