マンゴーにはなれそうもない
あたしがフラついて
優弥に支えられてトレーラーに戻った時
充電中の携帯に電話が入っていた。

オーナーからだった。

明日から帰ると昨日行っていたので
折り返し電話も構わなかったが

警察がくるから悪いけど戻って来てくれと
そう云われて・・戻る事にした。


「もし放火でも瑠璃のアリバイはある」


優弥はそう云ってあたしを勇気づけ、
それから出勤していった。

あたしは叔父さんの車で一緒に
店に戻った。

そこには甲斐が所属している
この管轄の消防士たちが来ていた。

黒コゲに焼け落ちた無残な現場で
愕然となって・・

優弥の叔父さんに支えられてるあたしに
知り合いの消防士は痛ましい目を向けた。


「現場検証も付き合わなくちゃいけない」


オーナーがそんなあたしの肩を叩く。

言葉は聞こえるのに意味が消えていった。


あたしの頭の中にあるのは

( なぜ、ここまでして・・? )

ハナから放火を疑っていたからだ。


「その時間帯、貴方は何処で何を?」


だが、今、
犯人扱いされているのは
店を最後に出た、あたしだった・・。

悔しいやら悲しいやら・・
このあたしが体を震わせっ放しで。


「瑠璃さん・・・!」


叔父さんが証言してくれていたその時。

甲斐がアケで
そのまま此処に駆けつけたのだ。

彼はそんなあたしを見るなり、脱いだ
ジャケットを羽織らせると体ごと抱いた。


「心配ないから、誰も瑠璃さんを疑ってない。
これはアクマで形式上の事だから・・。」



放火が疑わしい場合、
誰もが最初こうやって疑われるのだそうだ。

それも・・慰めでしかない気がしてる。


( 何で・・優弥じゃなく・・
貴方があたしを抱き締めてるワケ・・? )


弱気になってるあたし

子供みたいな
どうしょうもない、そんなコトを。


「・・・う・・・・!」


つい・・
甘やかされるままに胸を借りたのだった。


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