マンゴーにはなれそうもない
抱きすくめられながら
あたしはまだ言葉を失ってる。

彼の危険さを感じたのは
やはりあの眼差しのせいだ。

カウンターに座っていた彼と
気付けば目が合ったこと・・

こちらから逸らさない限り
何か意味のある視線を送り続けるから。

自惚れ屋でありながら
不器用にも思える真っ直ぐさ。

思い通りに行かなければ
我侭な・・ただの甘えん坊になる。

私には男を甘えさせる程の
度量はない

だから相手はいつも年上。
でも結局は同じ。

イクツ年上でも
男の本質は変わらないのだ。

私自身のせいでもある。
・・・この性格だ。

甘えたいのに
甘えさせて貰えない。

今ではそれももう諦めてた。

あたしは・・彼だけを
拒んでいるのではないのかも・・?


「友達以上は無理・・。」

「本当は
好きな男なんていないんだ?」

「・・・・・・。」

「・・正直だな。」


見透かした様に云わないでよ
何が解る? 何を知ってるの?

あたしにだって解らないのに・・!


「男は当分いらないの。
困らせるならもう会わないから。」


胸板を押し返して離し、
体の向きをドアに傾けて云った。


「・・・また逃げる。」

「逃げる? "嫌われた"って
言葉は思いつかないワケ?」


どこまで自信過剰なんだと腹も立つ。

車のドアを力いっぱい閉めて、
振り向く事なく小走りに帰ってきた。

自分の想いばかり押し付けて
鬱陶しいとさえ思えた。

こんなお誘いは避けよう。

男と云う生き物が
全て悪者に見えてきてしまう。



恋とか愛とか、あたしの人生に
もう・・そんなスパイスは要らないのだ。



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