マンゴーにはなれそうもない
ショップに入ると
春のキャンペーンの
ノボリが目に飛込んでくる。

人当たりの良さそうな男性が
対応してくれていた。

「それ、一番人気ですよ。」

CMでみたカッコいい携帯の
サンプルを手に取る。

今ならまだ在庫があると
いうので・・まあいいか。

当然、新規で
新しい携帯に変えさせられた。

メモリーを移し終ると彼が
携帯を取り上げ
前カレはドイツだ? と聞く。


「とっくに消してある。」


さっきの着信記録にも
名前はなく番号だけだった。

付き合ってもいないのに
まるで亭主関白である。


「これで安心だ。」

「また友達が減っちゃうな・・。
連絡も面倒だし。」

「本当に面倒くさがりだな。」

「フンだ。」


ケーバン変わったからって
メールで報せるのって
結構大変だよね?

この場合、案内もできないし。


「・・アベル起きて、着いたよ。」


家に帰って来て犬を降ろし、
荷物を玄関前に降ろして貰った。

げっ・・!

最悪だ、ウチの
父上が出掛けようと表に出て来た。


「ああ、おか・・えり。」

「こんにちは。初めまして。」

「やあどうも、
いつも娘がお世話になって♪」


ニッタァ~と横目で娘を見る父。

何やら男同士で話してるのを無視。
コソーと、アベルを連れて
中に入ろうとしたら襟を捕まれた。


「いやー、初めてだよ。
この25年間で娘が男の子を家に
連れて来るなんてなァ・・?」


何が言いたい・・! オヤジっ。


「まあ上がって
ゆっくりしてって頂戴な。ね?」

「はい、
お言葉に甘えて失礼します。」

「・・・・。」


そう云って放任主義の父上は
パチンコに出かけていった・・。

フツー、娘が
見知らぬ男と朝帰りしてるんだ。

ちょっとは心配しなさいよ。


「いい親父さんじゃーん。
あ、それ、俺が持って行くよ。」



・・・・・・・・・アレが?


すっかり彼氏気分の年下男は
すこぶるゴキゲンで

ダッチや、食料入れをホイホイ
家の中まで運ぶのだった・・。







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