マンゴーにはなれそうもない
携帯のフォルダを開いて
見る写真・・・


「コウちゃん・・。」


携帯を変える度、
移してばかりいるから
画質が悪いけど。

思えばまともに
あたしを愛してくれたのは
この人だけ・・。

あたしの事を
本当に可愛がってくれた。

今こうして少しはまっとうに
やっていけるのも彼のお陰。

(ふふ、
相変わらずロリコンなのかしら)

彼曰く、二十歳以上の女には
もうタタないとか。(笑)

無茶をしてた若い頃・・当時17歳。
彼は36歳。
その筋のエリート若頭。
つまり、あたしは現役高校生で愛人。

この場合、不倫とは思っていない。
彼は奥さんとは内縁だったし・・

同時まだ二十歳そこそこだった彼女も
彼の"そう云う女"を知っていたから。

母親と折り合いの悪いあたしは
住み込みで
隣町の小料理屋でバイトしてた。

その時に知り合ってから
衣食住の全てを面倒見てくれた。

あたしの前では
極道らしからぬ極道だった優しい男。

彼の事を思い出すと
あの背中の鬼子母神が恋しくなる。

高校卒業と同時に一方的に別れを
告げられてアッサリとフラれたけど。


( ねえコウちゃん・・
まっとうには生きてるけど、あたし、
何故かこんなになっちゃったよ・・? )


ぱちんと
携帯を閉じて煙草に火を着けた。

やっぱり
あたしの目には涙が溜まってて。

彼・・今、
どうしているんだろう?

辛い想いをする度に
こんな事を思ったりするのだ。

優しい、いい思い出は
女を弱くも強くもするもんだね・・。

♪~、

「・・・!」

ピッ・・。


センチになってたあたしは
急に鳴り出した
携帯を咄嗟に取ってしまったのだ。



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