マンゴーにはなれそうもない
「もしもし?」

『俺・・。』

「ああ・・なに?」

『昨日さ・・、まだ話の途中だったろ?』

「もういいのに。よく解ったから。」


年下男のシュンとした声。

あたしが、
彼に訊ねたまま答えまで辿り着かずに
途中で怒って帰っちゃったから。


『会って話せない?』

「もう疲れてるの、寝るとこだったわ。」


嘘でもない、
泣きそうになってた眼が痛かったから。


「今、話せばいいじゃない」


聞くだけ聞いてやるかと、
新しい煙草にまた火を着けた。

何を言い訳がましく言われても
揺るがない準備はしていたつもり。


『・・俺ね、先輩の話しを聞いていて、
貴方を観察するようになってたんだ。』


何ソレ、どっちもどっちね、気色悪い。
心の中でつく悪態。


『結論・・、彼の目はフシ穴だと思って
間違いなかったな・・って。ずっと貴方を
見てる内に気が付いたら、いつも俺‥
他のお客にメラメラ妬いてんだもん・・。』

「・・・・・。」

『本当にゴメン、怒らすつもりなんか
ちっともなかったんだ。・・許してよ。』


見ているうちに好きになってた・・とは
ありがちなパターン。

でもそれは通勤電車での恋と同じ。
憧れは憧れで取って置くのが一番いい。


「・・そう。じゃ、
もう許したから。これで気が済んだ?」

『・・まだ怒ってるじゃん。』

「怒ってないわ、
傷って直ぐには治らないでしょ・・。」

『・・・・。』

「勝手に完治するから放っておいて。
貴方といると治りが悪いから。じゃ。」

『あ、』


ピッ。


もう電源もオフ。
多少スッキリした気持ちで携帯を閉じた。

もうさっさと
違う、若いコのトコへ行けばいい。

年下で・・貴方が手取り足取り
教えてあげなきゃいけない様な、
そんなコにすればいい。

心からそう思ってたのに。




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