マンゴーにはなれそうもない
「・・・どうかしたか?」

「ん・・? なにが?」

「ボーっとしてる」

「あ・・そう?」


珍しく足立くんがラストオーダー
ギリギリに入ってきていた。

店じまいの準備をチンタラ、
座りながらレジのシメをする。

今日は一日、こんな感じだった。
なぜか昨日の事は
彼にも話す気にもなれずに。


「久々に飲みにでも行くか?」

「本当? 彼女に叱られない?」

「ああ、大丈夫。」


あたしも変だけど、
今日は彼もおかしい様な気がした。

隠し事してるって・・ばれた?


「おー、いらっしゃーい。」

「こんばんわ。」


店を閉めてから目と鼻の先にある
無国籍居酒屋に来ていた。

店長同士、顔も知っている店だ。

席に着くとビールとチューハイを頼み、
お絞りで手を拭きながら
"何でも頼んでいいぞ"と微笑む彼。


「ねえ、足立くん・・もしかして
彼女とうまく行ってないの?」

「あー・・・。」

「何よ、歯切れ悪い。」


一緒に飲みだして30分ぐらいした頃
他愛のない話ばかりでどうもおかしい。

彼はビールから、水割りに変え
グラスをカラリと揺らして鳴らす。


「なんだかダメっぽい。」

「・・・・どっちが?」

「・・・両方かな。」


足立くんの彼女は年下で、
デパートの化粧品売り場に
勤めているらしい。


「あの職場はさ、
女ばっかでコンパとか頻繁なわけよ。
俺もあんま、相手してやってないから
そりゃ仕方ないとは思うけど・・。」


今日は特別に早い日だったのだ。
いつも夜遅くて不規則な彼の仕事。
彼女の不満が爆発した様だ。


「あたしの相手してる場合?」

「電話も拒否られてるしな。」

「・・・足立くんはどうなの。」

「俺・・? 正直、もう
好きかどうかも解らないんだ。」

「・・・そう。」


あっ。シンミリになっちゃった。

やべ・・。

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