マンゴーにはなれそうもない
「ただいま」

「お帰りぃ・・ワ、暗ッ。」


帰ると珍しく弟の隆<リュウ>が居て
台所でビールを飲んでいた。

二十歳の学生で許せる範囲の
ダンス大好きB系スタイル風。

彼女は今いないらしいが、
オンナジ類の女友達は多い。

姉のあたしが言うのもナンだけど、
まあモテてはいるようだ。

それ風なイカツさもあるが
話すとそうでもないギャップがある。

陽気と云うか、
父親譲りのノーテンキと云うか。

今、あたしとしては
このテンションに触れたくもない。


「元気出せよ、ルリルリ~ぃ。
ほれ、ビール出してやっからサァ。」


プシュ、と開けたビール缶を
差し出されるも
テーブルのそれを押し返して
自分がパタリとそこへフッ伏す。


「チューハイがいい。」

「お・・オッケー・・。
ねー、ナンカ、凹んでない?」


顔だけ横にをクル!
弟にまたも訴え様とゆっくり唇を開く。

さすが付き合いは長い、リュウは
あたしが何を言い出すかと身構えてた。


「お腹減った。」

「んじゃ、ピザ取ろうピ・・」

「から揚げ食べたい。」

「・・・・。」


既に出してたピザ屋のメニューを
引き出しになおしてる。

要求だけをツラツラ述べる姉。

あたしの機嫌がよろしくない事を
彼はよぉ~く、知っている。

ビールを一口飲むとあたしのカンに
触れないようにソウっと冷蔵庫へ。


「早くね?」

「う・・・うん。
ルリちゃん、先に風呂入ったら?」

「解った。じゃ、後で唸らせてね。」

「・・・・頑張る。」


たった今、
生姜をスリ器で磨り出した所なのに。

口答えしないカワイイヤツだ。

マメな弟よ、さすがだわ。
お風呂洗って沸かしてくれてあった。


「んで、父は?」

「マミちゃんとナイター。」

「そ。」

「お泊りで。」

「またかっ。」


・・呑気な。
何であたし、父親に似なかったんだ?


「・・え? 
カレシできたの、おとついだろ? 」


お風呂から上がってくると向かい合って
一緒に料理をつついてた。



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