マンゴーにはなれそうもない
「聞き返すなよ」


また前を見たかと思うと、
頬が緩むのを我慢してる・・微妙顔。


「キス・・・着いたらスグしたい。」

「・・・・・・・・。」


いやだ・・・どうしよう。ヤヴァイ

あの、
照れた真面目顔で運転する横顔。


今、あたしのココロの有様ったら

お皿を洗う、スポンジみたい・・

ギュッと鷲づかみされて搾り出されたのは

母性本能だけじゃ・・ナイみたい。


「・・・・でも、いいよ。」

「え!? なに、何!?? 今、なんて!?」


プッっ・・・・必死すぎ。

吸おうと思って出しておいた煙草を
カップホルダーに立てたのには訳がある。


「買い物は今日じゃないとダメなの?」

「いや・・・、え?」


体を少し起こし、
彼の耳元でコソッと囁いてみる。


「車・・どこかで止めない・・?」

「・・・・・、」

「________て・・きちゃった」

「・・・・・・・!」


息をハぅ、と吸った音の後だ。
横顔から喉へゴクリと通過した生唾。

一度もあたしの顔を見下ろさず、
急ブレーキになりそうな勢いで
車のハンドルを回す回す。

ズズッとタイヤの音をさせながら
Uターンしたと思ったら。


「油みたいな台詞だ」


なんて呟いてた。

気が変わらないウチにと思ったか
大急ぎで車は大きい公園の
暗ぁい、駐車場へ入って行く・・。

桜の木の下に停め
シートベルトを外して辺りに
人ケがないのを確かめてる。

だだっ広い駐車場、
車は疎らに・・京都の鴨川に座る
カップルみたいな間隔をあけていた。


「こう云う現場、初めてかも」

「あたしも・・ンん・・・」


やっと落ち着いたかに笑ったのも
束の間、唇を引き寄せあう。

許して貰うキスはいつもより念入りで

「チカラ抜いてて」

そう云うのはあたしの方。
たっぷりのサービスの途中だったのに。


「んん!」


ガクン。

スグに
シートを倒してしまう彼なのだった・・。

< 60 / 129 >

この作品をシェア

pagetop