マンゴーにはなれそうもない
「・・ねー、何合炊いたわけ?」
「6合?」
「マジ・・何人分だよ・・。」
「6人分? アレっ、もしかして
ルリちゃん、もうお手てが疲れちゃった?」
「アノネ、疲れいでか。」
早朝の台所で弟とカウンターを挟み、
向かい合わせでオニギリを握り続けてる。
市のお祭りイベントのステージで
彼らのチームが踊るんだそうな。
「日曜の朝からあたしに
こんな事させて・・高くつくよ。」
「皆さぁ、ルリちゃんの作る
オニギリを楽しみにしてんだって。」
「アンタも手伝ってるじゃん。」
まー、いいか。
こんな日以外、
あたしがリュウの為に何かしてやる事は
殆ど云って、無い。(←言切り)
ブツブツ云いながらも握ったものを
竹皮の箱にランダムに詰めていく。
具はいたってシンプルに。
おかずはリュウ特製のだし巻き、
から揚げ、タコウィンナー。
「お茶持った?」
「for sho!」
準備が出来た所で
慌しく弟の四駆に乗り込んだ。
そう、あたしはビデオ撮影の係りで
こーゆー時はいつも付き合わされる。
「モー疲れた。」
「なにぃ? 早ぇーよっ!」
運転する弟に
クタりともたれ掛かって笑ってた。
晴れて良かったじゃない?
あたしは窓から遠くの空を見上げる。
【悪いマンゴー】は・・日当たりの悪さで
熟れるのが遅かったのかも知れない。
なんて・・、くだらない事を。
気分はまるで自由になった吸血鬼・・
久々に太陽と風を感じてる。
隣は弟だけど。(笑)
「ねー、リュウ。アベルも連れてさ、
今度、河の近くでテント張らない?」
「フフ、ルリちゃん判りヤスっ。」
「何。」
ハンドル握りながら
あたしの頭に手をポンポン置いて、
ニヤニヤとからかう前フリ。
「可哀ちょーに、
人生にチュかれたんでちゅねー?
あーヨチヨチ・・! イッタっ!!」
取った腕をガブ。
間が悪い。気分は
ヴァンパイアだったんだってば。
「"オイナリさん"も握ってやる?」
「ゴメンナサイ」