マンゴーにはなれそうもない
「・・・ええ。アノ」

ひっくり返ったカナブンみたいに
少し痛む肩の方を見上げると、
どこかで見た様な? 小麦色の肌の
南の出身かと思う・・そんな顔立ちが。


「痛ちっ! 」

「あぁっ、ごめんなさ・・い!」


動こうとすると彼が声をあげた。
打ち身に響くのかな・・?


「ちょっと我慢して・・
仲間の救助、少し待ちません? フフ」

「・・仲・・間、ハア」


オーバーな。ちゃんと立って
少し手を伸ばせば届きそうなのに。


「アレ 僕の事覚えてないんだ?」

「え?」

「30円。」

「あ・・・。」


出番が終ったから私服だったんだ・・。

あ、そーか。
どーりで見た事アル訳だ。(←薄情。)


「僕は甲斐充<カイミツル>・・」


はあ? 何、この人・・!
こんな時に自己紹介させる気?


「あ・・あたし」

「26歳、独身。」


無視かっっっ。 いやいや、

そんで、そんな事、誰も聞いてないから。

どんな神経してンの? ったく・・。



「趣味は体を鍛える事、スノボです。」

「・・・。」


ちょっとォ・・勘弁してよ。

それを今! あたしにも言わせるの?

ウチの親父並に無神経な男ね・・!

この縄文時代のチョット乱暴な
土葬みたいな状態で何をノンキな事を


「一度、僕と結婚して下さい・・!」


言ってん、だ・・・か・・・。


暗闇の中・・
あたしは青くなったに違いない。

た、タイヘン・・・!!


「急いで!!
この人、酷く頭打ったみたい!
エト・・、甲斐さん? 血は? 大丈夫っ?」

「・・・・今のところ。」

「そう・・。」


胸を撫で下ろす。

だって、一緒に落ちて打ち所が悪くて
後で"チーン"とかヤダもんね・・ん?

チョット待って・・記憶じゃ、人波に
突き飛ばされて腰に腕が回った気が。

・・庇おうとして一緒に落ちたの?
スゴイ・・さすがレスキュー隊員・・。


「ルリちゃん! 大丈夫か!?」


ライトがチカ!

救助隊員とリュウの顔が見えた。

テカ・・こんな格好見ないでホシイ・・


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