マンゴーにはなれそうもない
(もう完璧に散っちゃってる・・)

駅から歩いて帰って来ていた。
そうすると当然通る、公園の脇道。

桜の木を眺めながら通り過ぎる。

思い出すのは・・
イイコトばっかり云ってたあの男。

今考えなくても
どんな難攻不落の女もあの年下男の
手に掛かればきっと一撃なんだろう。

昨日の落下事件、
知られてなきゃないいんだけどね。

(特に彼女には)

憂鬱の溜息でダラダラ歩き、
肩のコリを解すつもりで首を回す。

緩やかな坂道のカーブを照らす街灯、
その内の1ツが点いていないのが
目に止まった。

消えてさえいなけりゃ・・
なだらかな美しいラインなのに。

「・・・。」

姉の言葉がぱっと浮かぶ。

あたしはけして
完璧など求めてはいない。

あたしにだって人格があるんだから。

それに、スケベで世が丸く収まるなら
辞任する政治家はいないんじゃない?

やっぱりあたしは"シスター・マリ"
の様に寛大にはなれないのだ。

そう思ったら、
姉と弟は毛質がよく似ている・・
間違いなくあの2人は兄弟だ。

(きっとあたしだけ
隣のオジサンの子なんだわ。)

・・小さい頃、バカ親父にそう
ダマシ聞かされて泣かされたっけ。

なんて思い出してる所にもう家の
門柱の灯りが遠目に見えてきた。

ん・・?

不気味なオヤジが夜の九時に
玄関をホウキで掃いている。何ゆえ?

痴呆入ったンじゃないでしょうね・・。

笑えて来て、もっと近づいたら
声を掛けようかと思っていたのに。

瞬く間に
横をすり抜けて行った何か_____

モギュ。


「あっ!?」

あたしのオッパイをまんまと
通りすがりにヒト揉みして行った・・!?

アゼン・・と自分の胸を庇っていると
犯人の乗った自転車は、素知らぬ顔で
作業中の父上の後ろを通っていく。


「ち、痴漢!!」

そう声をあげた途端
犯人は立ちこぎで逃走しようとしてた。


「え、なに?」

「いいから、それ貸して!!」


バッグと引き換えにオヤジの手から
それを奪い取ると走り出していた・・、

後姿のあたしが何をしたってワケ?

絶対、許さん・・!!









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