マンゴーにはなれそうもない
過去形の言葉があたしの足を掴み、
じわじわとその中へ引き摺り込む。

ココロにまで水が浸水して・・
"もう駄目だ"と脳内が白くなってく。


「・・最後のあれは失言だった・・あまりに
突然で俺も・・実はパニクってたから。」

「・・・・。」


" ・・俺は一度、貴方を許したよね? "


あの言葉には結構な殺傷能力があった、
お陰であたしは・・意外と傷ついている。

自分では全くと云っていいぐらいに
意識してなかったが

弟は最近、あたしの好きなものばかり
夕食に用意するし、

今日、久々に会った姉だって
店に入って来たあたしに振り返った瞬間、
その細い眉を寄せていた。

2人に共通して
垣間見える"痛ましそうな"一瞬の表情。


( なりたくて、なったんじゃない )


毎日をいつも通りに振る舞い、
"痩せた"と云う事実に目を瞑るあたし。
そうしなければ自尊心にまで傷が広がる。

彼らと同じあたしが
彼の目にも映ったのだろうか?

そんな"みすぼらしい"あたし見て
彼は彼なりに振り返ってみたのだろうか。

もしそうなら、
優弥もまだ捨てたものじゃない。

最近終った恋を見直すなんて面倒な事、
後腐れがないなら敢えてしない筈。

短かったけど・・その時は本気だったんだ。


「あたしが悪いのよ」

「・・・・・・・・・瑠璃・・?」


そう、馬鹿なあたしが一番悪い。

優弥がまるで仕返しみたいな
子供じみたことをしたと責めるのは
間違ってる・・

こんな事になるのを
大人であるあたしは避けられた筈だから。

友達だからって・・気を許したあたしが、
年上だからって・・気後れしてた自分が。


________ 一番悪い。

こんな自分が愛せないから
心底 ______ 他人を愛せないのだ。



あたしは視線だけを落としたまま、
きっと虚ろな顔をしてたんだと思う。

優弥がまた名前を呼んだ。
それに反応してつい目をあわせた。



「ごめんなさい」

真っ直ぐ見た彼の顔は
何故か驚いた様な表情をしている。


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