マンゴーにはなれそうもない
「・・お店にさ、花が届いただろ?」


急に何を言い出すかと思えば
ドキリとした。

だが、この男に何を知られても
別にいいじゃないかと云う思い直し。

イザとなればハッキリ云える。


「嬉しそうじゃなかったね?」

「・・・・。」


バレンタインの日、
カフェの店長である
あたしに届いたバラの花束。

その時、この男はカウンター席で
遅いランチを食べていた。

メッセージカードには勿論
前カレの名。

不毛の恋。

先に冷めたのはあたしだった。

相手はルックスも良く、
話術にも長けていて人気者だった。
そして自惚れ屋でもあった。

ただ、好きだからと云う
子供じみた理由で付き合っていたが

ヒトツ嫌な所が見つかると
また1つ、2つと見えてしまうもの。

大嫌いになる手前に別れたのだ。


「バラは好きじゃないの。」


プライベートを話す義理はない。
無難にそう答えるだけにしておいた・・。





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