マンゴーにはなれそうもない
「優弥・・・。」
枝垂れかかる様にあたしに抱き着いた
その力の弱々しさがあたしを冷やす。
泣くのを堪えて震えているの・・?
理由は?
いろいろ思いつくけど、
本当の処は彼にしか解らない。
けれど、これで終わりなのだ。
何も考えないで・・
今は抱いていてあげよう。
あたしは優弥の背に
届く限りの位置へと手を回す。
彼の匂い、息遣い、
顔に触れた髪の柔らかさが少し懐かしい。
そして切ない。
長い睫が悲しそうにピクと動いてたから。
「・・泣いてもいいんじゃない?
どうせ、あたしの前なんだから・・。」
「・・・・・・。」
「優弥?」
「・・・・・・嫌なんだ。」
そう云われたのが
解って、直ぐ離れようとした。
何よ?
あまのじゃくな・・って思ったのに、
ファンデが着くのもお構いなしに
顔をシャツに押し付け、腰を抱き直した。
「崖から突き落とされた気分だった・・
"俺を騙すのは簡単だったんだ"
そう思い知らされたよ・・。」
「・・・騙す? それどう云う・・」
あたしには憶えがなく、
体を引き離してまで
それを確認しようとしたのに
優弥がそれをさせなかったのだ。
まるで、
"黙って聞け"と云うかの様に。
「"友達"に
性的関係もアリなんだ・・ってさ。」
あたしは目を閉じた・・ああ、彼は
やはり足立との事が許せなかったのだと。
結局は騙した事に・・なる。
反論することを諦めていた。
足立にしてみれば、大人なんだから
その位解ってるとでも思ったのだろう。
あの時、確かに出来る限りの抵抗をした。
だが、部屋に上がったのはあたし・・。
それにそんな事を口にしたら
若い優弥は・・
足立をどうにかするかもしれない。
憧れてなった・・消防士。
経歴にキズを着ける事はさせられない。
もう、戻れないのだ。
あたしの妙な落ち着きにも気付かないで
優弥は言葉を繋ぎ続けた。
「それでも俺は大人になろうとした・・。
まだ付き合ってもいない頃だったし、
それは・・貴方の自由だろうって・・。」