マンゴーにはなれそうもない
「・・・。」

「だから・・ごめんなさい。」


それも残酷だと思うが
ハッキリさせておかなくては
気が済まなかったのだ。


甲斐はちょっと考え込んでから
車のドアを閉めようとした
あたしにケロリとこう云った。


「そう云うのもアリだよね、うん。
じゃ、今日から友達って事でヨロシク!」


呆気に取られてたあたしは
つい・・その握手に応じてしまった。


「じゃー、また。
あっ、気をつけて帰ってよー。」

「・・・。」


これでいいのか??

手を振って車を見送ってる彼。
後悔をちょっぴり憶えるあたし。

だけど、
今日は嫌な所見せちゃったな。


(恨まれてる女か・・。)


何気に見るルームミラー・・
あたしの右側の髪のみっともなさ。

誰にも気付かれちゃいけない、
あたしはいつもの美容室へ向かった。


そして午後8時に帰宅。


「ただいま~・・。」

「おかえ・・ハァァっ!」


オカマみたいなリアクションの弟に
こっちがヒイてしまう。

台所に立つリュウは菜ばしを握り、
振り向いて拳を口に当ててしばし凝視。


「ルリちゃんが可愛くなっちゃった・・!」

「・・・無礼者。ドーユーイミ!」


失恋したからだと言われるのが嫌で
バストトップ辺りまでの長さにした。

担当者のイチオシと云うヤツを
やって貰ったらこうなってしまったのだ。

イメチェンしたのはいいが・・。

色を軽くしたレイヤーカット。
前髪は目にかかる長さで、
毛先にはランダムに動くカール。

"お上品さは要らない"って
云ったら担当は頷いてたし、

確か、
"色っぽくなる"って云ったよね?

大嘘つき。

我ながらキャラじゃないと思う。
二度とオススメは信用しない事にしよ。


「ったく・・失敗した・・。」


イスに座って煙草に火を着け様としたら
空かさずチャッカマンの火を差し出す弟。


「あ・・ありがと。・・何、その目。」

「今晩、俺の隣で寝ない・・?」

「その代わり、手足縛るけどイイ?」


リュウがいよいよオカシイ。イマサラダケド

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