マンゴーにはなれそうもない
「え?」

「どっか、アテはない?」

「どういう事・・?」


聞き違いでもないらしい。

姉は咥え煙草でバッグの中をまさぐり、
写真を一枚取り出して見せた。


「あたし・・・?」


黒髪ロングだった、
つい最近のあたしが写ってる。

全く覚えがない・・盗撮されたもの?


「洸汰の所の嫁がアンタを探してる。」

「瑞穂さんが?」

「家はとっくにバレてるから・・
解ってるでしょ? 関わンないの・・!
当時からの友達もダメよ、いいわね?」

「・・・。」


足元に置いてあった
イクツかのペーパーバッグ。

てっきり姉が
どこかで買い物をした帰りだと思ってた。

それをカウンターの上に置き、
あたしに茶封筒を差し出すのだ。


「当分目立ったトコへは出歩かないで。」

「・・・何か知ってるの?」

「いいえ、それだけよ。
兎に角もう関わっちゃダメ・・!
リュウにはうまい事言っとくから。」


姉はカウンターに身を乗り出し、
ハグをすると
待たせてあったタクシーで帰っていった。


( どうしよう。)


あたしは取り合えず、
閉店時間きっかりに店の戸締りをした。

照明を落とした中、
落ち着こうとバドをまたお買い上げ。


( 何で今頃? )


コウちゃんには
あたしの他にも愛人が何人かいた筈。

それに・・別に彼から
ヤバゲな物を受け取った事はないし、
大体、あたしの方がフラれたんだし!

一体・・何の為?

でも友達の処なんて行ける訳がない。
何があるか解らないってのに・・。

かといってカプホがある場所もマズイ。
ビジネス・ホテルもだいたい駅の近く。
そうすると限られてくる。

去年買ったX-TRAILも
あたしの車だとバレてるかも?

今日の所は裏の車庫に隠しておこう。
タクシーやバスが無難だ。

あたしは店を出て、
近くのバス停まで歩く事にした。

姉が買って来てくれたバッグを提げ、
早く落ち着きたい一心で。


「・・・?」


通りに出ようとすると、
来客用の駐車場に入って来た車がいた。

店灯は全部消え、
カーテンも閉まってるのに。





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