マンゴーにはなれそうもない

「・・オトナの"カッコかわいい"だな。」

「・・あたしの趣味じゃないです。」



てっきり聞かれると思ってた
夕べの電話の事。
内心ホッとしてた・・。

察しは着いているだろうに
触れてはこない。

彼は大人なのだ。

「瑠璃さんは少し太った方がいい。
背中なんか、触ったら痛い位だった。」

そう云って笑い、
色んな種類のパンが入った籠を
あたしに寄せて勧めてきた。

黒糖の入ったクルミパンが好みに合うのか
さっきからそればかり食べている。


「食べてはいるんだけど・・。」


痩せ始めると最後には背中の肉が落ちる。
お陰でブラのサイズも少し変わった。

見た感じ、彼は細そうに見えたが
肘から手首までの筋肉の付き方が凄い。
まるで"引越し屋さん"の腕みたいだった。


「僕と居ると太るって評判だよ?」

「ﾌﾌ　それ、苦情でしょう?」


確かに、朝から凄い食べっぷりが良い。

美味しく朝食を食べる為に
嫌な話を避けている様にも思えた。

笑わそうと・・気遣ってもくれている。


「・・・?」


手が伸びてきたと思ったら、
軽くプニプニと親指で頬を摘むのだ。

クスと目を伏せて笑い、
テーブルに肘を着いて顔を近づけた。


「実はお願いがあるんだ」

「・・どんな?」

「ここは僕持ちにするから、
今日一日付き合ってくれない?」


彼は忘れているのではないか?
あたしが此処にいる理由を。

そりゃ、不安にもなる。


「あの・・人混みが苦手なんです。」


本当は目立つ場所には
行きたくないという遠回しな言い方。

余計心細くなる微笑みってのも珍しい。
彼はニッコリと笑って云うのだ。


「大丈夫、心強い
ボディ･ガードばかり揃ってるから。」

「え・・・?」