異人乃戀
目覚め
薄い布が垂れ下がった形の仕切りの中央に畳が敷かれ、その上に敷かれた布団で湖阿は眠っていた。
気を失ってから丸一日眠り続け、やっとで目を覚まし、寝起きで思考の回らない頭で気を失う前の出来事を考えようとしたが、上手く繋がらない。それどころか頭が痛くなってきた。
起き上がって何も考えずにいると、段々と昨日の事が鮮明に脳裏に浮かぶようになった。
一日経つと何故昨日はあんなに冷静だったのか分からなくなってきた。が、自分の出した答えなのだから。と、自分を納得させると、再度布団に潜った。
寝ている間に誰かが着替えさせてくれたのか、浴衣姿になっており、枕元に制服が綺麗に畳んで置いてあった。
湖阿が寝たまま横を向くと、薄い布の向こうにいる人影が目に入った。
湖阿のいる部屋の警護をしているだろうと思われるその人影は、微かに揺れていた。
不思議に思い、起き上がって布をめくると青い髪の筋肉質な後ろ姿が。
湖阿はすぐにこれが誰か分かった。蹴飛ばされ、初対面にして言い争いをした相手、鷹宗だ。
鷹宗は刀をすぐ脇に置き、胡座をかいて座っていた。 どうやら寝ているらしく、時折頭が揺れている。
湖阿は蹴られた時の怒りを思い出し、顔でも抓ってやろうかと布団を出て素早く制服に着替えた。
湖阿布の外に出たと同時に鷹宗は瞬時に刀を抜き、湖阿を睨んだ。
鷹宗は何者かを確認すると、刀を鞘に収めたが、まだ湖阿に鋭い視線を向けていた。
負けじと湖阿も睨み返すが、内心では動揺していた。まさか、刀を向けられるとは思っていなかったのだ。
そして、悔しい気持ちが少し。
「起きたのか」
舌打ちをしてから言う鷹宗に、湖阿はさらに腹が立った。
何故、こんなにも湖阿を目の敵にするのか分からない。ただ性格が合わないだけではなさそうだが、理由は鷹宗にしか分からず、湖阿はそれを知ろうとは思わなかった。
「何よ?なんか文句でもあるわけ?」
「お前、女のくせに……」
湖阿の何かが切れた。湖阿の嫌いな言葉の一つに性差別用語が入っている。女のくせにという言葉は湖阿を今まで何度も怒らせてきた。
性格上、言われる事がしょっちゅうなのだ。
「はぁ?何で男と女が差別されなきゃいけないのよ?こっちの世界は知らないけどね、私の世界では名前は忘れたけど、男女が平等って法律ってのがあんの!確かに、昔は男尊女卑で女は地位が低かったけど、絶対、確実に男より女の方が強いわ!こっちの世界だって同じよ。女は強い。そうじゃないの!?」
湖阿の弾丸のような喋りに、鷹宗はア然とした。キレた湖阿は強気な性格にさらに拍車がかかり、人が何も言えなくなる程言い負かす。
「あんた、絶対尻に敷かれるタイプ!」
しかも、決めの一手は欠かさない。