異人乃戀
召喚
暗闇の中に円になって灯る数本の蝋燭(ろうそく)。その中心には灰色の髪をした美しい少女が長い杖を持ち額に汗を浮かべ、歌うように言葉を紡ぎだしている。
少女を囲んでいる大人達は、ただ見守るのみ。
少女の顔が紅潮し始めた時、少女の持つ杖の先端が光り、蝋燭の小さな火は有り得ないほど大きくなり、少女を包み込む。
それを見届けた大人達もまた、杖を持ち、何か唱え始めた。
大人達が唱えることによって、少女を包んでいる炎は杖の先端の光へと移動、凝縮し、遂には掌に収まる程の小さな球体になった。
少女はその球体を、自分が立っていた場所にかざすと、目を閉じる。少女の脳裏に浮かぶのは、平和なこの国と若き王の顔。
杖を上に大きく振り上げると、先端についた球体を勢いよく地に振り下ろした。
その瞬間、辺りは赤、青、白、灰色が入り交じった色の光に包まれたーー。