異人乃戀
神は干渉をしないのではないのだろうか?神の代行者である夜杜が手を貸すだけだといっていた。
神自らが出てくるということは本来ならばあり得ない。
「神ってこんなに小さいのかって思った?」
「そんなこと思ってないわよ!じゃなくて、思ってないです」
思わなかったと言えば嘘になるが、そういう事もあるだろうと湖阿は思ったのだ。少年の姿といっても神のため、敬語で言い直すと神は笑い出した。
「安心してよ。これが本当の姿じゃないから」
「なんで神……神様がこんなとこに居るんですか?」
湖阿が首を傾げると、神は首を横に振った。
「そんな言葉遣いじゃなくていいよ。それに、今日は神として来たんじゃないから」
だから今の僕は神じゃないと言うと、湖阿は考え始めた。
神じゃない神が自分になんの用なのか。そして、神じゃない神を呼ぶときに何と呼べばいいのか。
「ねぇ、とりあえず……神様じゃない神様のこと何て呼べばいい?神様でいいの?」
湖阿の言った予想外の言葉に、神は笑い出した。
優先順位を考えると、何の用かを聞くことが先だというのは湖阿も思ってはいたが、思わず後者が口から出てしまっていた。
「昔とちっとも変わらない。……くろがねって呼んでよ、鐵って」
「昔と変わらないって……。鐵?」
湖阿はこの名前に覚えがあった。昔、公園に居た野良犬につけた名前だ。
「本当の姿は犬ってことはないわよね?」
「神が犬だと思う?」
湖阿は首を振ると、偶然だと思うことにした。昔会ったことのあるかのような口振りに、言ってみたのだがそのような訳が当然あるわけ無い。
「……まぁいいか。ねぇ鐵……え?」
湖阿が鐵に視線を移すと、顔があるはずのところに顔はなく、視線を落とすと一匹の犬が座っていた。
「本当の姿ではないけどさ」
しゃがむと犬の頭を撫でた。昔、鐵という名前をつけた犬に似ているが、色が違う。小学生の時の記憶で曖昧だがこんなに綺麗な金の髪ではなかったはずだ。
「あの時の……?でも、色が」
「こんな色じゃ何されるか分からないから色変えたんだよ」
そう言うと、光だし、元の姿に戻ったかと思いきや光の中に見えるシルエットが明らかに少年と違う。
光が消えると、そこには金髪の青年と桃色の髪の少女が立っていた。
金髪の青年は鐵だと流れと雰囲気で分かるのだが、恰もさっきから鐵の隣に居たというように立っているツインテールの少女はいったい誰なのだろう?
湖阿が唖然と見ていると、鐵と少女が笑った。