恋愛記念日(恋愛短編集)




 舞台そでから、客席が見える。



 怖い。



 緊張で体の感覚が薄れてきた。



 同期の中で成績が下の人から演奏を始める。



 私たち三人の中で先頭の直子は、拳を握りしめていた。



「香織、今日の衣装、かわいいね」



 振り返って褒めてくれる直子の声は震えている。



「直子だって」




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