センチメンタル*ガール



「嫌だったらしまっておけ。今日のことは気にするなって何度も言ってるだろ。



聞き分けの良くない未紗にはちゃんと分かって貰わないとな。」



と佑輔がそう言った瞬間、顔を近づけてきてそのまま一瞬触れるだけのキスをしてきた。



その後、瞑っていた目を開くと待っていたのは暗くなった世界で



隣の佑輔は何事もなかったように映りだしたスクリーンを見ていた。



「…」



本当に佑輔はずるい。



そうやってあたしに何も言えなくさせるんだから。



諦めたあたしはお財布の中に再びお札をしまって、佑輔にだけ聞こえる声で"ありがとう"とつぶやいた。



その言葉を聞いた彼はあたしの頭を優しく撫でてくれて、それから映画が終わるまであたしたちは一切何も喋らなかった。



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