短編集~甘い恋~
「はい、お弁当」
あたしは歩にお弁当を差し出す。

「言っとくけど、味の保証はしないからね?」

「ん、りょーかい」

そう言って、蓋を開けた。

「いただきます」


…え?
なんの迷いもなく、食べている…。
…無理、してるんだよね。

「ねぇ、歩。無理して食べなくていいよ!」
「無理なんかしてねぇよ」
「で、でも!購買でお昼買ってあるんでしょ?そっち食べなって!」
「あ?あぁ。これはお前にだよ」

そう言って、袋をあたしに渡してきた。

「お前、昼飯ねぇだろ?」
「…っ」

袋の中には、ココア、メロンパン、チョコデニッシュが入っていた。

「あたし…に?」
「それ、嫌いか?嫌なら食わなくていい」

「う、ううん!好きだよ!…ありがと…。いただきます」

「ん」

なにそれ…。
あたしのお昼を買うために買いに行ってくれたの?
わざわざ?
あんな混雑の中?


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