短編集~甘い恋~
「お前さ、思ってること口に出す癖、直せば?」
「無意識ですもん…」

口を尖らせて言う。

「その顔も、無意識なわけ?」
「へ?」
「そういう顔、俺以外の前で禁止」
「え、どういう顔…」
「分らなくていい」
「?」

玄関を出ると、夕陽が沈みかけていた。

最近、この時間も明るい。
もう少しで夏だなぁ、なんて思う。

「家、どこ」
「え?」
「送る」
「や、平気です」
「お前も一応女だろ。気にしろよ、そういうの」
「あたしに手を出す物好きがいるならぜひ見てみたいです」
「バカが。お前は黙って送られろ。返事は?」
「は、はい」
「それでいい」


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