短編集~甘い恋~
「なにしてるの?」

この声は…っ

『慶っっ』

そこにいたのは、王子様の慶先輩だった。
ハサミを持っていた手を下した先輩。

「きみたち、里緒になにしてるの?」
「あ、この子、髪切りたいって言ってたから切ってあげようかと」
「へぇ」

違うんです…慶先輩…、違うんです…っ。

「じゃぁ…どうして里緒は、泣いてるの?」
「さ、さあ…」
「里緒はさ、簡単に泣くような女じゃねぇの」
『え…?け、慶?言葉遣いが…』

慶先輩はこちらに近づいてくる。

そして、あたしを引き寄せ、抱き締めた。

「…えっ…?」

「こいつに手、出すなよ、ブス」

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