短編集~甘い恋~
「平気…っ」

余計な心配、かけられない。

「平気なわけ、ねぇだろ!お前、体冷た…」

冷え切ったあたしの体を触り、顔を歪ませた。

「つか、お前…風邪気味だって言ってなかったか…?」

なんで記憶力悪いくせに、そんなこと覚えてんだよ…っ。

「ホント、大丈夫」

あたしは再び立ち上がり、ドンドンとドアをたたく。
「誰かっ!!いませんか…!!」

その時、後ろから抱き締められた。

「っ!ちょ、なにして…。離せっ!」
「もう、やめろ。お前そこで座ってろ」
「は…?」

嫌だ、と顔で示すと藤宮はあたしを担ぎ、無理矢理マットを背もたれにするように下ろした。

そして、自分の来ている学ランの上をあたしに投げ捨てる。

「着てろ。俺がなんとかしてやっから」


どうしてか、その言葉に、その声に…


安心してしまった。


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