One Of Them
第1章

幼なじみ






私、今井奈々香は10年間の大恋愛中(片思い)。


相手は世間一般では幼なじみと呼ぶであろう人。


そんな私の想い人の金井拓也と現在下校中。



「…奈々香?話聞いてる?」


『えっ?あ…ごめん、何だっけ?』


「はぁ〜最近、お前ボーッとしすぎ!何か悩みでもあんのか?」



悩み?もちろんありますとも!


あなたとの距離が幼なじみという場所から一向に進まないことですよ!


………なんて言えるわけもなく。



『べ、別にこれという悩みは…』


「ふーん…ならいいけどさ〜。何かあったらすぐ言えよ?俺達幼なじみなんだし。」


『…うん。』



そうやってまたあなたは言うんだね。


幼なじみって聞こえはいいけど私にとっては残酷なもの。


一番大切な気持ちをあなたに相談できないの。


もし、伝えたらあなたはどうする?受け止めてくれる?


結果がその逆だとしたら…私達の関係は幼なじみ以下になってしまうかもしれない。


私は臆病。すごく恐いんだ。



『ねぇ、拓也。』


「うん?」


『どうしても一歩踏み出せない時ってどうすればいいんだろうね。』


「…」


『気持ちは進まなきゃいけないのに、失敗することを考えちゃって勇気が出せないの。』


「……」


『それで一生懸命考えて考えて考えて…でも結局答えは出ずに今のまま。何も状況は変わらないんだ。』


「………」



私は拓也に気持ちを伝えられない代わりに、心の歎きを話してしまった。


きっとこんなこと言っても意味わかんないよね…



「奈々香。」


『え…?』



突然名前を呼ばれたと同時に拓也は立ち止まって私の腕を掴んだ。



「…それがお前の悩みだって受け取っていいんだな?」


『え……まぁ、うん。』


「俺も同じなんだ。」


『?』


「俺もずっと同じ悩みを持ってた。」


『えっ…』


「10年間ずっと隣にいた女の子に告白したくて…でも断られたらもう幼なじみでさえいれなくなるんじゃないかって…」


『それって…』


「でも、今なら自信を持って言える。奈々香、お前が好きだ。」


『拓也……本当に?』


「おう。」



こんなことがあるんだ。


拓也は私と同じ悩みを持ってたんだね。


早く、早く言えば良かった。


でも、今言って良かった。



『私も拓也が好きだよ?』





“臆病が引き起こす奇跡”





20120930





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