逢い死て
失楽の刻
聴いたこともないロックの激しい曲調と、耳元で打ち鳴らされるマラカスやタンバリンの音に、鼓膜が破けそうで。
安っぽいソファには隙間なんて無くて。隣で髪を振り乱しながら盛り上がる、名前も知らない女。さっきから肩や腕や尻が当たっているのにもお構い無しに。否、気付いていないのか。
………なんで、私は、こんなところに来ちゃったんだろう。
薄暗いカラオケルーム。
ドア近くの空いたスペースで躍り狂いながらロックを熱唱しているのは、私をここに来させた張本人――――夕都(ゆうと)はいわゆる、私の恋人というやつだ。
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