逢い死て
夕都は “ jnky ” というロックバンドのヴォーカルを務めている、らしい。
彼から話は聞かされていたけれど、実際観たことがなかったので、よく知らなかった。
それが昨日、明日は念願のライヴハウスでのライヴだ!とかなんとかかんとかで、来るように懇願された私。
私はロックにてんで興味が無いのだけれど、夕都が頑張っている姿を見たいと思ったのもあり、休日返上で行くことを決めた。―――のが間違いだった。
人生初のライヴハウスに足を踏み入れた私は、その異様な雰囲気に圧倒された。
頭がクラクラする程の煙草の匂いと煙、派手な衣装を纏った人達、悲鳴のようにライヴハウス全体に響き渡る楽器の音。ステージの下で狂ったように躍り叫ぶ客…………
そこは異世界だった。
ダークブラウンの髪に、ナチュラルメイク、オフホワイトのぺプラム、ワインレッドの無地のスカートといった服装の私はこの異世界では完全に浮いた存在だった。
居辛いったらありゃしなくて、引き返そうかとも思ったけれど、夕都の必死の表情を思い出したら、できなかった。